地図表示GPS活用術  vol.2 「ロスト」対策

すでに書いた通り、人工衛星からの電波によって現在位置を測定するGPSは、その電波が届かなくなったとたんに位置測定ができなくなり、ただのでかい時計になってしまいます。衛星電波は放射線のようなアブナイ電磁波ではないので、雲ぐらいは通り抜けますが固体の何かに遮られるとそこでストップします。山ではたとえば谷の側壁や、広葉樹林の枝葉によって電波が遮られ、GPSはしばしば「現在地ロスト」になってしまいます。

ただ、どういうわけかGPSは非常に気分屋で、遮るもののない広場でもなかなか測位できない時もあれば、屋内でも測位できる絶好調な時もあります。なので、どんな地形ならダメなのか、ということは一概に言えません。

また、友人Mとともに2機同時に稼働している時は、一方がまったくダメでももう一方がそこそこがんばって、トータルとしては1機の時より1.5倍ぐらいは電波が拾える(=測位できる)という傾向が見られます。電波受信装置は同じ構造なのに、なぜこのようなバラツキがでるのか?は謎っちゃあ謎なんですが、しじみは結果オーライな人間なので気にしません。

・・まあそんな話はともかく。このように登山中にGPSが測位できなくなった時、何に頼るか?が今回のお題なんですが、その筆頭はやはり!昔から登山者を助けてきた2つの道具、地図とコンパス(プレートコンパス)です。

地図&コンパスの場合も、その基本的な使用目的は現在位置の特定です。前編で書いたように、とにかく現在位置さえ分かれば、道迷い遭難は避けられるからです。

コンパスを使って現在位置を特定するには、クロスベアリングという方法があります。また、読図の熟練者なら、周囲の山々の地形の「見え方」から現在位置を割り出せるそうです(しじみはこれが全然できない・・T-T)。

しかし、GPSハイカーにとっては、これらの方法は一応おぼえておく必要はありますが、実際のところこれらを使う場面はまずありません。なぜって?これらはいずれも周囲の地形が見渡せる、見晴らしのよい場所でしか使えない方法であり、そんな見晴らしの良い場所なら、GPSの電波がとれない(=測位できない)ことはほとんどないからです。

逆にGPSの電波がとれない谷道などでは、周囲の視界がないのでクロスベアリングも使えません。このことから分かるように、GPSハイカーがおぼえるべきは、「周囲の視界がきかない時にも使える道迷い防止技術」なのです。
ところが、この種の技術というのが、実はほとんどないのです。

コンパスで使える方法はたった一つ。「コンパス直進」です。
(コンパス直進についてはこのページの2をご覧ください。Special Thanks イマダ様
これは現在位置測定法ではありませんが、一定方向にブレずに歩ける便利な技術です。ただし、これはたどるべきルートがほぼ平坦な、森林地帯などを歩く場合のみに使える方法であり、目的地との間に切り立った尾根や谷があって直進できない場合は使えません。また、地図にあらかじめ磁北線を引いておく必要があります。(磁北線については、また別の機会に詳しく書こうと思います)

では、たどるべきルートがカーブせざるをえない場合はどうすればいいのか?残念ながらこれについては明快な答えがありません。ただ、「こういうものが使えるのではないか?」という目星はいくつかあります。

1つは気圧高度計。自分の居場所が大まかに分かっている場合は、高度が分かれば地図の標高と照らし合わせて、現在位置をかなり絞り込めます。難点は、広大な森林地帯(地形が平坦)や細かくデコボコした地形では役に立たないこと。なのでコンパス直進と組み合わせるとよいのですが、入り組んだ地形だとだんだん誤差が累積してわけがわからなくなるおそれがあるので注意です。

ちなみにGPSにも高度計がついていますが、これは気圧高度計ではなく衛星電波による三角測量の応用なので、GPSが測位できない時には高度も分からないという使えない機能です(2005年春現在)。
※2005年夏、上位機種には気圧高度計機能が搭載されるようになりました。詳しくはこちら

2つ目は万歩計。いわゆる歩測です。あらかじめ自分が100mを何歩で歩けるかを測っておき、山では逆に歩数から歩行距離を割り出します。誤差が大きいことは覚悟しないといけませんが、普通に歩けさえすればどんな地形でも使える強みがあります。

あとは、コンパスで方位を確認し、高度計や万歩計で得られた情報を基に最も妥当な判断をくだす・・というのがしじみの考える、カーブ道での現在位置測定法です。

もっとも、しじみは現在、気圧高度計も万歩計も使っていません。なぜなら先に書いたように、MとのGPS2機体制で谷道などでもそこそこ測位できるため、今のところあまりそこまでの必要性を感じないからです。もしまたいつか単独行をやるようになったら、その時には迷わずこれらを買いに走ると思いますが・・。
※2005年秋、気圧高度計を購入しました。

以上述べたようなかたちで、GPSハイカーは、GPSが稼働しない時には手持ちのグッズと知識を総動員し、現在位置の測定または直線移動に努めながら歩くことになります。まあ高度計と万歩計は最後の手段としても、GPS・コンパス・地図の三種の神器は必ず常備し、見たい時にいつでも見られるようにするのがよいと思います。

そしてもう一つ大事なのは、三種の神器は分散して装備すること!一つの袋やポケットに全部入れて、3つ一気に紛失とか破損とかいう事態になったら目も当てられません。これは去る2005年5月のピンオンリール破損事件の教訓です。

現在のしじみは、GPSは自作クリップでザックの肩ひもに取り付け、地図はザック側面にピンオンリールで装着(&激しく緊縛)、コンパスはやはりピンオンリールでズボンのベルトから吊り、ポケットに入れておく・・というスタイルをとっています。どれも見たい時にすぐ見られて、邪魔にもならずとっても便利!オススメです。

・・というわけで、気がつけばまた長々と語ってしまいましたが、2ページに渡ったGPS活用術のお話はこれにておしまい!この極マニアックな話を最後まで読んでくれた奇特なあなたに感謝します!(誰もいなかったらどうしよう・・)




週刊やましじみ:登山よもやま話のサイト  TOP山道具>地図表示GPS活用術<2>