ヤマビル戦記 ==果てしなき攻防==

まず初めに、ヤマビルとは何かを知らない幸せな方ヤマビル研究会さんのページをご覧ください。また、ヒルについてとことん調べ上げた希代の労作「ヒルがイル(「山たまごの東海岳行」様のページ)」もご覧ください。この恐るべき生きものと、登山者との攻防の様子がお分かりいただけるかと思います。

この茶色い悪魔は、滋賀県では鈴鹿山地のほぼ全域(最南部除く)、および比良山地西部(最北部除く)に分布しています。湖北の豪雪地帯の山にはいません。湖南アルプスには基本的にいませんが、信楽の一部で被害にあったことがあります。これ以上分布が拡大しないことを祈るばかりです。

数年前から鈴鹿に入りびたるようになったしじみは、当然のごとく早々にヤマビルの大歓迎を受け、血に染まった靴下にうごめくヤツらの姿に、何度半狂乱になったかしれませんでした。スパッツによる防護をあざ笑うかのように易々とズボンに靴に入り込み、靴下の壁にも穴を開ける(繊維を押しのけて皮膚に到達する)驚異の浸透力。尋常の装備ではとても防げないと悟ったしじみは、ネットで調べまくって様々な対策をとるようになりました。

まず試してみたのは、薬剤のたぐい。いくつか専用の忌避剤(衣服用のスプレーまたは塗布剤)も売られており、また「エアーサロ○パスをスプレーすると寄ってこない」などの情報もありました。

しかし、これらはことごとく失敗に終わりました。成分の効く効かないはさておくとして、それ以前に薬剤は水で流れてしまうことが多いのです。例えば雨に降られた時、夜露をたっぷり含んだ笹ヤブを歩く時、川を渡渉する時。靴や衣服に塗布した薬剤は流れて無効化され、そこからヒルの総攻撃が始まります。始末に悪いことにヒルは湿気が大好きですから、こうした足元が濡れるようなところに限ってヒルがウヨウヨしており、登山者は薬剤の無力さを痛感させられることになるのです・・(>_<)

また、こうした薬剤はどうも人体に良くない成分が使われているらしく、強力なものほど「皮膚に薬剤が触れないようにすること」と注意書きがあることが多いです。こうなると取り扱いも注意が必要で面倒だし、きちんとやっていてもそれこそ雨か何かで皮膚に付きかねず、使用に不安があります。逆に皮膚に触れても大丈夫系の薬剤は、往々にして効果が弱いように思えます。まあ全ての薬剤を試したわけではないので、一概には言えませんが・・。

さて、対ヒル作戦第1弾で見事に敗れ去ったしじみが、続いて投入した秘密兵器は「木酢液」。これは炭焼きの際にできる副産物で、人体に無害ながら害虫類の忌避効果があり、自然派の園芸愛好家の間で人気の防虫資材(薬剤ではない)です。これをヘアバンドにたっぷり染みこませて、靴の足首の部分に巻き付けてみました。

・・ところが、結論から言うと、これも失敗( ^-^;)
ヒルゾーンとして有名な山で2度の防衛に成功したので、それなりの効果はあったと思うのですが(実際、友人Mのスパッツについたヒルに木酢バンドを近づけたら、ひどく嫌がってもだえていた)、3度目の登山でついに1匹の特攻を許し、絶対防衛圏は破れてしまいました。

もっともこの時、しじみはバンドに木酢液を再度染みこませる作業をしないまま使用していたため、きちんとやっていたら防衛できたかもしれません。しかしこの木酢液、人体に害はないものの、すさまじいタール臭がする、スパッツ内部に色うつりして茶色に染めてしまうなどの欠点があり、非常に使いにくいものであったため、この1回の敗北を機に使うのをやめてしまいました( ^-^;)効果はあるので、どこかのメーカーさん、木酢液を原料にした使いやすいヒル除けを作ってくれませんでしょうか・・。

さて、作戦第2弾でもやっぱり敗れたしじみが、三匹の子豚のごとく3度目の正直で起用した作戦は、原点に返っての「物理的防除」でした。 ヒルを物理的に防いでしまう、つまり足元のヒルの侵入口を、ホームセンターで売っている補修用テープでがっちりテーピングしてみたのです。


まず、ズボンと靴下の隙間をなくします。
本作戦ではそもそもスパッツ内に侵入させないので、これは念のためです。

 
続いてスパッツを履き、靴とスパッツの隙間もしっかりふさぎます。これで完成!

これは思いのほかうまくいきました。このテープ(アサヒペンのダックテープ)は粘着力が強く、かなり歩いても隙間があかなかったのです(ただしハードな登山の時は、昼食休憩時に貼り直した方がいいでしょう)。また水にも強いため、靴が濡れても平気でした(さすがにひざ上水深の渡渉をくり返すと、スパッツに貯まった水が内側から流れて剥がれてしまいますが・・)。
さらに、懸念された剥がし跡も、Kさんの布靴では全く残らなかったし、しじみの革靴では多少残ったものの、後で水拭きするときれいに消えました。

隙間があかないのですから、さすがのヒルも入ってこれません。このため、靴からそのままスパッツに登って、さらにズボンの太ももあたりまでがんばって登ってくるヒルがしばしば現れるようになりました。カリン塔に登る孫○空のようです。もちろん指で容赦なくはじき落とします。2005年秋に登場したこの作戦は、ついにシーズン中は突破されることなく、しじみの足を守り続けました。このすばらしい成績により、もちろん2006年も続投予定です。

しかし、足元の防衛が達成されたからといって、それで全てが万々歳ではありません。ヒルの本当の恐ろしさは、マルチレンジ攻撃を仕掛けてくることだからです。
すなわち、ヤツらは木などにとりついて、近づく人間の気配(熱)を感じて上から落ち、首、腕、腰などにとりつくという芸当ができます。足元を固めたからといって安心していると、今度はシャツを血染めにされるのです(経験者語る)。

これを防ぐには、あらかじめシャツの裾をズボンに入れてしまうことです。ダサいと言われようがえなりかずきと言われようが、シャツを血染めにするよりはマシです。そして腕は長袖に軍手。軍手は編み目が粗いので突破されることもありますが、手の部分は目がしょっちゅう届く範囲ですからヒルがとりつけばすぐ分かるし、さっさと落とせば大丈夫です。
首だけはタオルを巻くぐらいの不完全な防護方法しかないのですが、首にとりつかれることはさすがにそうそうないし、2人以上で登っている時は時々仲間同士でチェックしあえばいいと思います。

また、気をつけなければならないのは登山後です。山を下りた後は、全身はもちろんザックまで、ヒルがついていないか入念にチェックしましょう。往々にして、吸血には至らないまでも衣服にヒルがついていることは多いので、しっかり落とす必要があります。後の登山者の迷惑にならないよう、落としたヒルは必ず石などで潰して殺しましょう。靴で踏むと、生半可な踏み方では生きていて再び足に登ってくることがあります。(ただ、石で殺すにしてもこれがなかなかしぶとい・・複数匹いるとパニックになってしまいます。どなたか簡単な一撃必殺方法をご存じないでしょうか・・)

このヒルチェックをしっかりしないと、せっかく登山中は防げていたヒルも、装備を解いて無防備になった体に易々と侵入され、帰りの車の中などで吸血されまくる上に、家までヒルをお持ち帰りすることになってしまいます(経験者語る)

最後に、吸血された時の対処法。ヒルが吸いついてなかなか離れない時は、ライターの火を近づけるといい・・などと言われますが、これはけっこう熱いし危ない。なのでしじみは、消毒アルコールスプレーをかけるようにしています。試したサンプルが少ないので確実とまでは言えませんが、わりと落ちやすくなると思います。落とした後は、抗ヒスタミン系の虫刺され薬を塗って、絆創膏貼っておしまいです。傷の治りを速くするためにポイズンリムーバーで血を抜いたことは・・今のところありません( ^-^;)

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というわけで以上、とりあえず2006年春時点でのしじみのヒル対策中間発表でした!また続報があれば追加いたします。「もっといい方法を知っている」という方は、ぜひぜひメールフォームまでご一報くださいね〜!お待ちしています!!




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