金糞岳 Attack4 〜帰ってきた東俣谷川コース〜


■本図は (財)日本地図センター発行の25000段彩・陰影画像を元に作成した。(同センター承認済)
■この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第82号)
※25000段彩・陰影画像は数値地図25000を元に作成されており、本図はその二次利用のため両文併記。


金糞岳(4)/2005年6月5日


・・東俣谷川コースは、封印されたはずだった・・

しかし、我々は見つけてしまったのです。そう、3度目のアタックの中津尾根コース踏破の時、小ピーク「小朝の頭」を越えた先で、尾根から鳥越林道に下りられるショートカットがあるのを・・。

ネットで調べてみると、鳥越林道は車で岐阜まで抜けられる立派な道で、しかも登山口のすぐそばに広い駐車スペースがあるようです。中津尾根コースの3時間どころか、この最短コースを使えば頂上まで1時間もかからないとのこと。こんな反則のようなコースがあるのに、我々は何を好きこのんであんなジャングルを登っていたのか・・。

とはいえ、もはや東俣谷川コースは封印され、金糞岳踏破も中津尾根コースを使って果たしたので、そのショートカットがいかに便利とはいえ、もう我々には関係ない話のはずでした。少なくともしじみにとっては、金糞岳はすっかり過去の山になっていたのです。

ところが、あきらめることを知らない男・Mは違いました。しじみが東俣谷川ジャングルの悪夢などとっくに忘れていた2005年正月の新年会(その年の登山方針を決める大事な儀式です)の場で、彼は突然熱く語り出したのです。

「我々の輝かしい登山歴の中で、たった一つだけ汚点がある!それは、金糞岳の東俣谷川コースが未踏破なことである!あれから1年半、我々の登山技量も少しは上がったであろう!今こそ封印を解く時だ!!」

2回に1回は道に迷ってる登山歴のどこが輝かしいのか、というツッコミはさておき、この宣言によってジャングル歩きの地獄が唐突によみがえってきたしじみは、封印解除に徹底反対しました。しかしMはしじみの反論などお見通しで、周到に落としどころを用意していました。

「最短コースの鳥越コースを使って、頂上尾根から東俣谷川コースを下るんだったらどうだ?」
「ムム・・それならいい

こうして封印解除はあっさりと決まりました。しじみの徹底反対なんてこんなもんです。

しかし決まったとはいえ、同地は雪深い地方ですから、すぐにはアタックできません。結局なんやかんやで(主にしじみがぐずっていて)、実際にアタックしたのは6月になってからでした。

==ここからやっと登山の話( ^-^;)==

鳥越林道を車で詰め、鳥越登山口からスタート。さすが最短コース、実に40分ほどで金糞岳頂上に着いてしまいました。一息つくのももどかしく、さっさと東俣谷川コース分岐を目指します。今日の我々には頂上なんぞどうでもいいのです。

東俣谷川コースに入ると、道の状況は一変してすさまじいヤブになります。でもそれは覚悟の上。枝を払い、草をかきわけて進みます。道はやがて東俣谷川の源流と合流し、ヤブの比較的薄い場所をたどって川の右岸と左岸を行ったり来たりするジグザグルートに。濡れて滑りやすい岩も多く、気が抜けません。

あっというまに我々のザックには葉っぱや枝がいっぱい付着し、まるでゲリラの偽装のよう。服も草の汁であちこちが緑色に染まっていきます。時々小さなシャクトリ虫が肩や背中を這っていたりして、互いに付いた虫をデコピンではじき落としあう場面もしばしばです。また、所々イバラが生えていて、知らずにひっかかっては痛い思いをします。文字通りイバラの道です。密生地を強行突破しようとしてイバラでグルグル巻きになったMはキリストのようでした。

東俣谷川コースに入って1時間半もたった頃でしょうか。我々は川岸の少しひらけた場所で、見おぼえのあるアルミプレートを発見しました。

「敗北地点プレートだー!!」(※Attack2参照)

そう、ついに我々は、東俣谷川コースの貫通に成功したのです。約2年ぶりに戻ってきた敗北地点は、当時我々が考えていたよりも、ずっと頂上尾根の近くでした(この時初めて、GPSで正確な位置が判明しました)。あれはまぎれもない敗北であったとはいえ、オレたちけっこう頑張ってたんだ・・と我々はしばし感慨にひたりました。

「今回ここに来たからには、もはや敗北ではない」と、Mは敗北地点プレートを取り外し、新しいプレートに付け替えました。なのでもうここには敗北地点プレートはありません。もしもこれを探しに本コースに挑戦した読者の方がいらっしゃいましたら、ゴメンナサイです(いないと思うけど ^-^;)。

目的は達成しましたが、せっかくなので時間の許す限り下ってみることにしました。相変わらずひどい道でしたが、2年前の光景が次々よみがえってきて、なつかしさでいっぱいの沢下りでした。

当時我々が所々に付けていた道標プレートもいくつか発見。ところがそのうちの1個が、確か枝に結びつけたはずなのに、どういうわけか少し離れた岩のくぼみに置かれていました。


しじみ


しじみ
「これって、はずれていたのを誰かが拾って置き直したんやね」
「え〜?オレら以外にこんな山奥に来るヤツがいるかあ?
 これはきっと、プレートが自分で移動したに違いない!」
「・・プレートテクトニクスってか?」
「先にオチ言うなよ」 

そんなさみしい二人だけ漫才をやってるうちに撤退時間の1時が近づいてきたので、昼食をとって引き返すことにしました。もちろん帰り道もすさまじいヤブ。コース図を見ていただければ分かるように、ごく短い距離なんですが、頂上尾根に復帰するまでになんと2時間40分もかかりました。ちなみに下りに要した時間は2時間35分で、往復で計5時間以上かかっています。登りと下りでほとんど時間が変わらないのは、ヤブのせいで下りも全然スピードが出せないから。げに恐ろしきヤブ地獄です。

尾根道に復帰してからも疲労でスピードが出ず、鳥越林道の駐車スペースに着いた時にはもう夕焼け空でした。ボロ雑巾のようにクタクタでしたが、目的を達成したことで気分は軽やかです。

長浜市街に戻って、焼鳥屋で祝勝会となりました。ビール片手に今日の勝利を語り合います。

しじみ



しじみ
「ついに貫通したねえ東俣谷川コース!最初は反対してたけど、
 やっぱりやって良かったなあ!もう思い残すことはないよ!」
「・・ああ、これでコースの全行程が把握できたから、
 心おきなくふもとからの完全踏破に取り組めるな
「そうそう・・って、えええええ!?」

なんと、今度は東俣谷川コースの完全踏破を言い出したM。今回のようなトンネル両側掘り式では踏破したことにならない、ふもと(追分)から頂上(金糞岳)までを一気通貫してこそ真の踏破なのだ・・というのです。

酔いもいっぺんに吹き飛び、またしてもしじみは徹底反対に回りました。もう未踏部分はないのだから、なにもわざわざ登り直す必要はないではないか!!そう主張して一歩も引きませんでした。もうあんなヤブはこりごりだと、今度という今度は絶対に譲らない覚悟でした・・。

・・なのになぜ、こんなことになるのかな?
(結局5分で説得されました・・_| ̄|○)

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