【三周ヶ岳】 岐阜県揖斐郡揖斐川町


■本図は(財)日本地図センター発行の25000段彩・陰影画像を元に作成した。(同センター承認済)
■この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第82号)
※25000段彩・陰影画像は数値地図25000を元に作成されており、本図はその二次利用のため両文併記。

三周ヶ岳1(福井県コース)/2006.8.26


友人MKさん、しじみのトリオ登山第3回目は、山たまごさんも紹介していた緑あふれる北の名山、三周ヶ岳。コース途中には「夜叉ヶ池」なる大きな山上池もあるそうで、期待が高まります。

太陽が照りつける真夏の朝、友人Mの車で北国街道こと国道365号を爆走し、広野ダムへ。長い林道の終点が登山口駐車場です。人気の山らしく、駐車場には既に何台もの車が停まっていました。

車を降りて準備をしていると、見知らぬおじさんがこちらへ近づいてきました。何の物売りかと怪しんだしじみが思いっきりメンチをきると、おじさんは最寄りのしじみを避けて、最も遠いKさんに何やら紙を手渡し、そそくさと去っていきました。
※よいこのみんなへ:「メンチをきる」は「ガンをとばす」と同じ意味だよ

「何だったんですか?」
「ボランティアの人。夜叉ヶ池の自然を守りましょうっていうビラをもらったの。
 池にはヤシャゲンゴロウっていう珍しい虫がいるから、池を汚さないようにって。
 池の周りでは火器も使っちゃいけないらしいよ」
「ああ、そのことだったら事前にネットで読んで知ってますよ。ビラもらわなくてよかった」

すると突然Kさんが怒り出しました。

「そういうことじゃないでしょー!どうして初対面の人にメンチきったりするの!
 だいたいあなたはいつも自分の殻にとじこもって拗ねた目で世間を(略)」

なにかカンにさわったらしく、ものすごく怒られました( ^-^;)
Kさんと出会って1年、すっかり上下関係というか親子関係が定着しております。

そして怒られながら登山開始。友人MもKさんに同調して「そうだそうだー」と無責任に煽りまくります。2対1で分が悪いしじみは必死に反論。
「いやでも・・物売りかと思って・・ああいうのは最初が肝心だから・・ゴッ!!」

話に夢中になりすぎて、張り出した木の枝に思いっきり頭をぶつけました。山の神様にまで怒られたようです。

奇声をあげてひっくり返ったしじみを心配して、Kさんの怒りはようやくおさまりました。やがて道は川を離れて尾根に乗り、アキレス腱いじめの急登に。みんな息づかいが激しくなり、しゃべるどころではなくなってきました。

何しろ時期は真夏、炎天下です。うっそうとした濃い緑も、春秋には快適ですが、夏は羽虫がぶんぶん飛び交う蒸し風呂地獄。我々は来る時期を思いっきり間違えてます。夏のこのコースは非オススメ( ^-^;)

川が近いこともあってか、アブがひっきりなしに現れては、チクリと手痛い一撃をお見舞いしてきます。特に黒のジャージを履いているKさんは集中砲火を浴びていました。
「黒はクマやなんかの大型獣の色だから、虫の標的になりやすいのです」
しじみは超今さらなウンチクを披露してまたKさんを怒らせていました。

単調な登りをヒイコラ言いながら歩いていると、突然Kさんが「あっ」と声をあげました。聞くと「目に虫が入った」とのこと。しじみは急いで救急箱から綿棒を取り出し、Kさんのまぶたの裏を探って虫の除去を試みたのですが、いくら探しても虫らしきものが見当たりません。

そのうちKさんが痛がって「もういい」と言い出したので、やむなくペットボトルの水で目を洗って、様子をみることにしました。さいわい痛みは徐々にひいていったらしいので一件落着でしたが、虫の行方は永遠に迷宮入りとなってしまいました。(※後日談では、どうやら虫が入ったのではなく、まぶたの縁あたりをアブに刺されたのを誤認したようです)

後にしじみがコレを買ったのは、この事件でしじみが何の役にも立たなかったどころか余計に目を痛めたかもしれないという深い反省にもとづくものであります( ・_・; )しじみさん事あるごとに株下げまくり・・。

長い登りがようやく緩やかになったかと思うと、視界がぽっかりひらけて、涼しげな水面が現れました。ようやく夜叉ヶ池に到着したようです。


夜叉ヶ池 
※これは昼食後に稜線上から撮った写真

ここにもやっぱり地元ボランティアの方々がスタンバイしていて、汗みずくの我々を「お疲れ様〜」とねぎらってくれました。そして夜叉ヶ池の自然についてあれやこれや説明してくださったのですが、今度は3人とも疲れ果てていてまったく聞いちゃいませんでした。ボランティアのおじさま方ごめんなさい・・( ^-^;)

池の岸辺はそれなりに広く、他の登山者たちも思い思いにシートを広げてくつろいでいます。しじみたちも片隅に陣取り、お昼にすることにしました。
昼食のパンをかじっていると、空がにわかに曇ってきました。さっきまであんなに晴れていたのに・・?この天候不良に加え、既に予定時間も超過し、疲労も思ったより濃いので、三周ヶ岳の登頂は取りやめ、すぐ近くの「夜叉ヶ池山」に登って帰ることにしました。三周ヶ岳さんよ、今日はこのぐらいで勘弁しといたるわい・・(池乃めだか風)。

というわけで昼食後、稜線を南に進んで夜叉ヶ池山へ。正直この山には期待してなかったんですが、登ってみるとこれが意外や意外、好展望のすてきなピークでした。三周ヶ岳へ続く北の稜線や、夜叉壁と呼ばれる池ノ又谷左岸の岩壁がバッチリおがめました。

延々続く県境尾根。左奥が三周ヶ岳。
夜叉ヶ池は何だか青汁っぽい・・。

眺望を満喫した後、往路を引き返しました。空はどんどん暗くなり、灰色の雲が垂れ込めてきました。そして再び夜叉ヶ池の岸辺に降り立った時、ついにどしゃ降りの雨が降り出しました。これでは池のほとりでもう一休み、というわけにもいきません。池の周辺でのんびりしていた他の登山者たちも、突然の雨に右往左往しています。我々も合羽を着込み、そそくさと下山路につきました。

ところがところが。池を離れてしばらくすると、滝のように降っていた雨が急にぱったりとやみ、太陽がニコニコと顔を出しました。何とも絵に描いたような夕立ちです。しかし今日は1日晴れの予報だったのに・・?我々は首をかしげつつも、シャワーのような雨で逆にさっぱりとし、雨上がりのキラキラ輝く自然林を楽しみながら下山しました。おしまい。

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後になって、夜叉ヶ池には「夜叉姫」なる神様が住んでいる、という伝説があることを知りました。この夜叉姫様は雨を降らせる龍神なのですが、元は人間の娘なんだとか。そしてこの夜叉姫様はたいそう嫉妬深く、夜叉ヶ池に美人が来るとどしゃ降りの雨を降らせるそうです。おお、これで謎が解けた!あの夕立ちはKさんの美貌のせいだったんだ!!

・・あ、でも当日は他にも女性登山者がたくさんいたし、それに第2回三周ヶ岳登山の時はKさんがいたにもかかわらず雨が降らなかったなあ・・え、えーと、あのその・・( ^-^;)


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