小型浄水器
=SweetWaterシリーズ/WALKABOUT (MSR社)=



収納サイズ:約20×15×10cm(布袋に収納) 重量:約240g
濾過速度:1分間に約700ml(ポンプ手動式)
*毎度こんなドヘタ写真しか撮れなくてごめんなさいm(_ _)m

川の水を濾過して、飲めるようにする器具です。黒い吸入口を水につけ、ポンプをガシガシとピストンすると、白い排出口から濾過された水がチョロチョロと出てきます。

吸入口およびポンプ内にフィルターがあって、そこで不純物が取り除かれる仕組みで、特にポンプ内のフィルターの濾過精度が高く、0.2ミクロンまでの物質を濾しとるそうです。疫学的なことはよく分かりませんが、調べたところ細菌類が1〜5ミクロン(大腸菌で1〜2ミクロン)、寄生虫卵は10〜50ミクロンぐらいの大きさだそうなので、十分な精度といえるでしょう。

使い勝手もよく、吸入口が川底に沈まないようにするための可動式のウキがついていたり、排出口がペットボトルやポリタンクの口にフィットするように設計されていたりと、随所に工夫がなされています。使用後の手入れも洗って乾かすだけ。目詰まりしても付属のブラシで掃除すれば元に戻ります。フィルターの寿命も、約379L(=100ガロン)となかなか長生き。もちろん濾過する水質によってはもっと早くダメになることもあるでしょうが、数百Lも濾過できれば、たまのキャンプで使う程度なら、5〜10年はもつ計算になります。

このようにたいへんよくできた商品なのですが、その割にあんまり売れてない感じです。しじみが登山具店で買った時も、棚の隅っこでホコリをかぶっていました。なんでか?それは多分、山でこの器具を使うシーンというのが、ごく限られているからだと思います。

そもそも普通、山で渓流の水を飲めるようにするには、「口をガーゼなどで覆ったペットボトルで大まかなゴミを除去して取水→ストーブを使って煮沸消毒」という手順を踏みます。そう、別に浄水器なんかなくっても、日本の渓流の水はそこそこキレイなので、煮沸だけで安全な飲み水が得られるのです(※1)。煮沸は手間がかかると言っても、「川の水=調理専用」として、食事調理の煮炊きと兼ねてしまえば手間でも何でもなくなるので無問題。こと低地キャンプにおいては、浄水器のつけいる隙はなかったりするのです( ^-^;)

では浄水器はまったく役立たずか?というと、そうではありません。浄水器が煮沸に勝るシーンというのもあるのです。それはたとえばこんな場合です。

1、「テント泊縦走」をする場合

縦走、すなわちひたすら尾根伝いに歩くという登山スタイルの場合、水を得るのが低地キャンプに比べて格段に難しくなります。稜線近くの水場は、源流部なので水量が少なく、涸れかけていることもしばしばだからです。水深が2cmぐらいしかないチョロチョロの水流では、ペットボトルなどでは取水しにくく、取れたとしても不純物が多く混ざってしまいます。
でも浄水器なら、水深がなくてもポンプ機能で取水できるし、不純物も混ざりません。もちろん谷に沿って下っていけば、いつかはペットボトルでも汲める豊富な水量になるでしょうが、それでは時間をくってしまうし、急な谷を下るのは危険でもあります。縦走ではできるだけ稜線から離れないのが基本、チョロチョロの水流でもモノにできるというのは、浄水器の隠れた大きなメリットです。

2、荷物をとことん軽量化したい場合

水場がまんべんなくあるコースであれば、飲料水をすべて現地調達にすれば、何キロもの荷物を減らせて大幅な軽量化がはかれます。この場合、取水するごとにいちいち煮沸していては日が暮れてしまいますが、浄水器を使えば濾過した水をすぐに飲めて、時間のロスがほとんどありません。

しじみは鈴鹿スペシャルをやっているうちに、特に1の状況が多々想定されたため、この浄水器の購入に踏み切りました。しかし今書いてみて思うに、こんな登山を好んでやりたがるのって我々だけかもしれない・・。カタギのハイカーである皆様には、むしろ2の使い方が有効かと思います。1にも2にもピンとこなかった方は、残念ながらこの商品とは縁がなかったということで・・(多分8割以上がそういう方と思われます ^-^;)

ただ、浄水器のありがたみが最も実感できるのは、まぎれもなく1のケースです。これから縦走登山を本格的に始めたい、というちょっとカタギの道から外れかかっている人は、持っていて絶対損はないと思います。同志よ、いつか鈴鹿の稜線で会おうではないか・・( ^-^;)

 


※1
もっともいくらキレイといっても、煮沸もしないで生水をそのまま飲むのは避けた方がいいと思います。手ですくって飲んでいる人をよく見かけますが、上流に行ったらクマの腐乱死体があった、なんて場合はシャレにならないので・・

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