ビバーク演習<2>

ビバークグッズを考えるにあたって、まず自分が遭難する状況というのを細かく想定する必要があります。ふつうビバークせざるをえない状況というのは、「道に迷って日が暮れた」か「ケガ・病気で動けない」の2つに大別されますが、実際しじみの場合、前者の「道に迷って」はほとんど考えられません。

・・と書くと「普段道迷い率40%とか書いてるヤツが何を言う」というツッコミが降りそそぎそうですが、GPSを持っている限り、少々道に迷うことはあっても「長時間に渡って現在位置が全く分からない」という事態はほぼありえないため、まず間違いなく日没までには人里に出られるのです(強気発言)。

唯一考えられるのは、崖崩れなどで道が崩れて通れず、来た道を引き返すにも時間がない・・という場合ですが、いかに崩壊した道でも、(沢登りや岩登りルートならいざしらず)徒歩で巻けないことなどほとんどないので、可能性はごくわずかでしょう。

なので、ありえるのはやはりケガ・病気の場合です。しじみはほとんどの場合が2人登山なのですが、2人が2人ともケガをするという確率は低いでしょう。したがって必要とされるのは、無事な仲間が助けを呼びに行っている間、半日から1日の時間を山中で耐えしのぐための装備です。仲間が(助けを呼びに行く前に)ある程度の処置はしてくれるでしょうが、仲間が行ってしまった後は、何もかも負傷者自身がしなければならないことを考えてください。

これが単独行の場合は、さらにシビアです。負傷した体をムチ打ってビバーク設営をし、まず2〜3日はかかるであろう救援までの時間を耐えなければなりません。この場合の装備は、両足が全く使えない状態でも使用可能なものを考える必要があるでしょう。

3人以上のパーティーの場合は、負傷者を搬送できるので(状況にもよりますが)、ビバークに追い込まれる確率は低いでしょう。もちろん備えはすべきですが、あまり重厚に揃える必要はないように思います。ただしGPSを持たない(道迷いビバークの危険のある)多人数パーティーは、少人数よりも動きが鈍いぶん危険度が高いので、しっかり備えるべきでしょう(その前にGPSを購入しよう)。

というわけで、一口にビバークグッズといっても様々な状況に応じたパターンがあるので、いくつかのレベル別に分けたグッズリストを作ってみました!

快適度別!?ビバークグッズリスト

もちろんこれは一定の目安であり、グッズの組み合わせは他にも無数にあります。ちなみにしじみは春秋はレベル7のエアマット無し版、夏はそれからさらにシュラフを引いた装備を毎回持って行ってます。こんなんだから日帰り登山なのに45Lザックが満タンなどという狂気の沙汰になっちゃうわけで、そこらへんはせめてもうちょっと軽量化を考えるべきかも・・( ^-^;)

なお、グッズの中核をなすツェルトとレスキューシートについて、ビバ演を通じて考えたことを以下にまとめたので、グッズリストとあわせてぜひ読んでください!

1,ツェルトについて

床部分を展開させていた痛恨ミスはさておくとして、あと一つしじみが間違っていたのは、わざわざペグまで打って、ツェルトをピシッと張ってしまったことです。ツェルト内空間が広い方が快適だろう、という考えからやったことですが、これがさにあらず。空間が広ければ広いほど寒いのです。熱の拡散を防ぐために、ツェルトはあえてダルダルに張るべきなのです。

しかしストーブを焚いてツェルト内を暖める場合は、ある程度の空間がないとたちまちツェルト生地に燃え移ってしまいます。なのでダルダルとはいってもそれなりの空間を確保するか、折り畳み傘を装備して、ツェルト内でさして空間を作るなどの工夫が必要でしょう。

そうするとツェルトにペグは不要、ということになります。ただそれではあまりにもダルダル過ぎて使いにくい、という場合はせめて片面ぐらい打った方がいいような気もします(今後の検討課題その1)。ただケガでビバークに追い込まれた場合、ペグを打つ余力などそもそもないのではないか?とも思います。
またビバークではありませんが、夏場、ツェルトをテント代わりに使う時には、ペグを持っていってピシッと張った方が快適でしょうね。

あと、今後の検討課題その2として、側溝掘り用のスコップは要るのか?というのがあります。昨今のテントは底面の防水性が高いので、雨水除けの側溝はあまり意味がないそうですが(本当かな?)、ツェルトの場合そこまでの底面防水力は期待できないので、もちろん側溝を掘れれば掘った方がいいのですが・・。しかしこれもまた、ケガでビバークに追い込まれた時にそこまでできるか?という疑問があります。パートナーがいれば掘ってもらえばいいような気もしますが、そんなことやってる間があったらさっさと助けを呼びに行ってもらった方がいいのかも。
しじみはモンベルで売っていた小さなスコップを一応携帯しています。店員さんいわく「スプーン代わりにもなりますよ」とのこと・・。

2,レスキューシートについて

既にサイト内でさんざん持ち上げる文章を書いていて言うのもなんですが、レスキューシートはあまり過信しない方がよいでしょう。一部で売り文句として使われている「毛布の2〜3倍の保温力」というのは、いくら何でも言い過ぎというか、確かに断熱力はすごいのだけど、それと「保温力」というものは明らかに違うと思います。
レスキューシートが何枚もの毛布に匹敵するのならば、結露のデメリットを差し引いても、その価格や軽量コンパクトさからシュラフの存在意義をおびやかす商品になりうるわけで、でも現実にそうなっていないということは、結局そこまでの威力はないということなのです。

ビバ演でしじみが陥った惨状は、シートをテープで成形するなり、筒状のレスキューシート(ビバークサック)を使えばある程度は改善されますが、結局肩口からの熱の逃げは止められません。熱を蓄える能力自体ないので、やはりマミー型シュラフ・シュラフカバーには敵うべくもないのです。レスキューシートはあくまで「凍死しない」最低限の体温を維持するためのものと考えましょう。

ではシュラフ・シュラフカバーを持てばレスキューシート(シート型)は不要か?というと、そんなことはありません。例えば筒型のシュラフやカバーでは、意識不明のケガ人・病人を包むことができません。でもシートなら、ケガ人をくるんでテープで止められます。
また、ツェルト・テント床の断熱材にも使えるし、シュラフやシュラフカバーに巻いてテープで止めて、保温力アップにも使えます。そして無敵の防水力!(中は結露するが、外からの雨水などの浸入は完全にシャットアウト)。救急用具として、また他のビバークグッズの補助用具として使うのが、レスキューシートの正しいあり方と言えるでしょう。

筒型レスキューシート(ビバークサック)については、シュラフカバーと比べて値段以外のメリットが見いだせないのですが、何度か使ってみれば、ひょっとしたら意外なメリットが見つかるかもしれません。今後の検討課題その3ですね( ^-^;)

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というわけで以上、しじみビバーク対策2006の巻でした!これらの中には「検討課題」として示したものがいくつかあるように、実体験を伴わない推測で書いている部分もあるので、あくまで参考にとどめて、ご自分でよく考え、かつできれば実際に試したグッズを持つようにしてくださいね〜!

しじみもまた寒くなったら第2回ビバ演をやってみます!母よ止めるな( ^-^;)
いやそれ以前に、通常の登山で遭難して、強制的に第2回ビバ演に追い込まれることがありませんように・・。



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