山岳保険  vol.2 対人賠償の話&山岳保険さまざま


山の事故でもっともお金がかかるもの。それは対人賠償です。すなわち山で同行者や行きずりのハイカーにケガを負わせてしまった場合、そして最悪死なせてしまった場合の賠償費用です(ブラックな話でスイマセン・・)。

多くの山岳保険では、対人賠償と対物賠償をひっくるめて「個人賠償」と呼んでいます 。自分個人の過失によって人や物に損害を与えた場合の賠償、という意味です(※保険によっては違う定義があるかもしれないので注意)。

しかし、しじみの経験から言うと、対物賠償というのは山ではあまり可能性がありません。時速数十キロの車じゃあるまいし、いくらしじみがオッチョコチョイでも、歩いていて他人のテントに激突して壊すなんてことはまずないからです(もしあったら過失より犯罪性を疑われます)。まあものすごく低い確率で、過失による物損を起こしたとしても、壊した物がテント程度なら大した弁償にはならないでしょう。

ところが、今回のテーマである「対人」、つまり人にケガをさせる可能性は、実は山では意外と高いのです。 いや他のハイカーに激突するとかそういうことではなくて。最も確率が高く怖いのは、落石です。

登山を趣味とする人であれば、誰でも一度は落石を人に当てかけた、あるいは当てられかけたことによって「ヒヤッ」としたことがあるかと思います。

しじみもある山の岩場で、友人Mの顔面にこぶし大の石を当てかけたことがあります(幸い数センチの差でそれました)。Mは「別にいいよ」の一言で許してくれましたが(だ・・)、もし逆にしじみが落とされた側だったら、もうこんなヤツとは一緒に登んねえって泣きわめいていたに違いない恐ろしい出来事でした。

その後、「見るからに落石の危険がある地帯では、一方が安全な岩陰などに避難して合図するまで、もう一方は絶対動かない」という「落石協定」がMとしじみの間に締結されましたが、それでも落石の危険性が完全に消えたとは言えません。なぜなら、「こんなとこで落石するわけがないっしょ」という場所に限って起こるのが落石だからです。相手が気をつけていない時に限って、落っことしてしまうのが落石なのです。

これはなにもしじみだけが特別ドンくさいのではなくて(^-^;)、ある程度の登山経験のある方なら、きっと共感してもらえることと思います。どんなに歩行技術が優れた人でも、必ず落石は起こしてしまうものです。そして、数メートルの間隔があれば、落石は一瞬にして凶器になります。その可能性は、山ではけっして低くありません。

人にケガをさせたら、その重度によっては何千万円という賠償金を払わなくてはなりません。これが、しじみは山岳保険に加入した理由の2つめです。山岳保険の多くは、個人賠償の最高補償額を1億円に設定しています。個人賠償はほとんど「落石賠償」と言い換えてもよい、としじみは思っています。
※もし最悪の「過失致死」になった場合、賠償金は1億円でも足りないような気もしますが、これはおそらく山岳事故の場合、車での対人事故などよりもその過失性が薄く、1億を超えるような損害賠償になるケースがまれだからではないか・・と思います(それとも単に支払い能力の限界?・・違う解釈をご存じの方はご指摘ください)。

ものすごく長い前置きになってしまいましたが、山岳保険とはつまり、ここまで述べてきた「捜索・救助費用」と「対人賠償費用」を補償してくれる保険です。傷害保険・生命保険的な補償もありますが、それらはほとんどオマケ。山の事故特有の2大出費要因を補償してくれるところが山岳保険の山岳保険たるゆえんであり、登山を楽しむための「お守り」としての必要条件である、としじみは思います。
(もちろん、保険に入ったことで安心して、安全対策をおろそかにするなんてのは本末転倒ですが・・「お守り」はあくまで「お守り」でしかありません)

以上を読んで山岳保険に興味を持たれた方のために、下記に代表的な山岳保険のリンク一覧をあげておきますので、よろしければ参考にしてください。ちなみに、しじみがどれに加入したかはナイショ!

* 主な山岳保険・共済 *

※その他、自社サイトを持たない有名どころとしては「千代田保険センター」「山岳保険センター(三井ビューロー)」などの山岳保険があります。
※捜索・救助費用および対人賠償費用を補償しない山岳保険・共済もありますが、本文の趣旨に合わないため割愛しました。掲載したものはいずれも両費用を補償するものです。

さて、続いては山岳保険に加入するに当たっての注意事項について・・いいかげん話が長すぎですが、もうちょっとだけおつきあいください( ^-^;)


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