空調服



 扇風機

昨年(2004)夏頃から、静かなブームとなっている「空調服」。ご存じの方も多いと思いますが、小型扇風機で服の中に風を起こして汗を蒸発させ、気化熱で体感温度を下げる・・という奇抜な商品です。(詳しい原理はメーカーの説明ページをご覧ください)

主に農作業などの野外作業着として広まりつつあるこの空調服ですが、レジャーでの着用はまだあまり聞きません。ではなぜしじみはこれを買ったか?それは、「汗をかかない長そで上着」が、しじみの長年の夢だったからです。

しじみは無類の汗かき&暑がりのため、これまで夏はたいていTシャツ1枚で登山していました。Tシャツは腕を露出することになるので、日焼け、虫さされ、植物かぶれ、すり傷といったダメージを受けやすくなります。なので本来は「登山は長そで」が基本なのですが、夏場に長そでの上着なんぞ着ようものなら即ゆでダコになってしまうため、あきらめてそのへんのリスクには目をつぶっていたのです。

そもそもオーロンやドラロンといった速乾繊維のTシャツでさえも、登りはじめから30分でもうベットリ。いくら速乾といっても、汗が際限なく出続ければ追いつかないのです。さすがにスッポンポンで登山するわけにもいかないので、これはもうしょうがないんだ、と思ってずっと過ごしてきました。

そんなある日、某新聞の記事で空調服のことを知りました。服に扇風機をつけるという王様のアイデアっぽい構造と、ロケッティアみたいに飛べそうなフォルム。こんなもん冗談に決まってる、と当初は一蹴したしじみでしたが、本当なら汗かき問題の解決になるかも・・という思いと、こういうオモチャっぽいもの(失礼!)に目がないマニア魂がうずいて、結局2005年春、ネット通販で購入しちゃったのでした。12,600円(長そでタイプ、送料別)。

送られてきた空調服をさっそく着てみたしじみ。回る扇風機。服の中に渦巻く風。おお!涼しい!!すっかり気に入ったしじみは、その後しばらく風呂上がりに意味もなくこれを装着して、「うっとうしい」と家族に煙たがられました。

使用してみた感触では、オモチャっぽい外見にもかかわらず、よくできていると思います。扇風機や電池の重量はほとんど気にならないし、駆動音も静かです。そして、確かに涼しい。静止していると寒いぐらいです。

これはイケるかもしれない。さっそく登山に着ていきました。しかし、晴天の下、高低差400〜500mの登り道を踏破し、汗が滝のように噴き出た瞬間・・

  空調服● 1R 15分30秒 ○炎天下の登り道
K .O .
決まり手:背面発汗責め

登り道では、さすがの空調服も発汗量に勝てませんでした。いや処理能力的には可能かもしれないんですが、ザックの圧迫によってどうしても背面に空気が行きにくくなる、という登山特有の問題があって、背中および首筋に汗をかいてしまうのです。もっともこれはしじみの発汗量が尋常でないという問題も輪をかけているため、あまり汗をかかない人なら大丈夫かもしれません。

しかし、汗を完全に止めることはできなかったものの、防護力に優れた長そでの服を、暑さをあまり苦にせず着ていられるという点ではバッチリ合格でした。それに、登り道で汗をかいてしまっても、尾根筋や下り道で発汗がおさまるにつれて空調服の力が勝り、サラサラ快適な登山ができたので、総合的には優秀な道具だと思いました。というわけで、空調服はデビュー戦敗退ながらも実力を認められ、晴れてレギュラー道具に仲間入り。めでたし、めでたし。

なお、空調服の下はシャツを1枚着るのが一般的な使い方のようですが、しじみはより効力を求めるため、すっぱだかの上に直接着ています。実用上問題はなく、この方が涼しいのですが、同行の友人Mには「それは人としてダメだ」と嫌悪感を示されてしまいました。まあしじみとしても、女性と登山する場合はさすがにやりませんが、男同士ならいいじゃんかよぉ・・(でも現状の生っちろいプヨプヨボディーでは、やっぱり見えたとき見苦しいかな・・)

空調服の動力は、単3電池4本。風速「強」で回し続けた場合、約4時間半で切れてしまうので、替えの電池がやはり4本いります。これにより、しじみは

空調服=4本+予備4本=8本
GPS=2本+予備2本=4本
ヘッドランプ=4本+予備4本=8本

・・と、1回の登山で実に20本もの単3電池を装備することになりました。メカ生体ゾイドもビックリです。我ながらちょっとアホかと思います。
空調服とGPSは毎回確実に電力を消費するので、普通の乾電池ではたちまちカラ電池の山ができてしまいます。なので、もはや充電池が手放せません。充電池サイコー。ビバ充電池。

・・えっと、話を戻して。その他、使ってて気づいた空調服の特徴こまごま。

  • 腰部側面に扇風機があるという構造上、中〜大型の腰ベルトつきザックは、扇風機がゴツゴツしないよう、ベルトを少し緩める必要があります。しじみは気にならないのですが、「ザックは腰で背負う」派の、腰部の密着感がお好きな方には少々不満かも・・。
  • 登山の歩き始めからスイッチを入れていると、体が冷えてウォームアップが妨げられるような気がするので、歩き出して暑くなってから起動するのがいいかと思います。
  • ヤブなどでは排風口に枝が入って「ブイーン」とチェーンソーのような音を発することがあります。ビビってチビりかけました。慣れればなんてことないんですが・・。なお、枝がからんで扇風機を止めるようなことは、今のところ起こっていません。
最後に、空調服の最大の欠点を発表します。それはカッコ悪いこと!!
いや、デザインは頑張ってるんですよ。作業服としてそこそこカッコいいと思うんです。扇風機さえ見えなければ。軽量化と製造コストの問題で仕方がないこととは思うんですが、現在のものはどうしても扇風機のオモチャ感がぬぐえず、知らない人には何かのコスプレと思われてしまいがち。だから街中や電車では恥ずかしくて着られないのです。

でも、この欠点は空調服がファッションとして広まり、街にあふれるようになれば自然に解決されること。だから皆さん!今年の夏は空調服ですよ!みんなで着れば怖くない!過剰冷房問題もこれで解決!空調服が地球を救う!!

・・どうもこのテの文章を書くと回し者っぽくなってしまうしじみでした。
(でもほんとに使える商品ですよ!信じてー!!)


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