「まとまった休みがとれたから泊まりがけで山登り行こうよ」
Pさんからそんなお誘いがあったのは、一昨年(2003年)の秋のことでした。
しじみ
Pさん
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「行こう!ぜひ行こう!テントはオレが持っていくけど、
秋だから防寒着を多めに用意した方がいいよ。それと・・」
「誰がテントで泊まるなんて言ったのよ。
旅館に決まってるでしょ。ほら、この前言ってた大台ヶ原よ」 |
そ う で す か ・ ・
まあ、そんなやりとりがあったのはおいといて。
こうして行くことになったのが、奈良県の秘境・大台ヶ原です。1500m級の高山でありながら宿泊施設が完備され、手軽に高山ハイキングが楽しめる近畿の人気スポット。白樺やトウヒの林の中をゆっくり歩ける高原風のハイキングコースもあれば、コケむしたブナの原生林を進む本格的な自然探索コースもありの、一粒で二度おいしいと評判の山です。
しじみもPさんも一度は行ってみたいと常々話しており、Pさんはその実現のために、スーパーの従業員にはとりにくいはずの土日連続休みをとって(どんな裏技を使ったのやら・・)、しじみの休みに合わせてくれたのでした。
行きたかったとはいえ、急な実現にあせるしじみ。「原生林をどこまでも歩きたい」 とかムチャクチャをいうPさんを説得し、できるだけ無理のない登山プランを立てました。また、地図の読めない男女である我々が原生林で遭難しないよう、夜を徹してGPSにありったけの地点ポイントを打ち込みました。
そして当日。近鉄電車に乗って一路奈良へ。途中でPさんと合流し、大和上市駅で下車。そこからはバスに揺られ、昼前に大台ヶ原の山上台地に着きました。
まずは宿泊施設・大台荘にチェックイン。ちなみにPさんと部屋は別々です。
読者の皆様、この件については何もふれないでください。
大台荘の食堂で昼食。名物・サンマ寿しをほおばるしじみ。山の上でサンマもないもんですが、ここまできてミソラーメンをすするPさんもどうかと思いました。
昼食後、いよいよ登山です。といってももう半日しかないので、この日はお手軽な東大台周遊コースへ。
こんな気持ちの良い低木林の中を歩きます。道は整備されており、スカート姿でハンドバッグをさげたおばちゃんも歩いていました。1500m級なのにこんなお手軽でいいんでしょうか。
大台ヶ原の最高ピーク・日出ヶ岳1695mにもすぐ着きます。この日は雲が出ていたものの、眺めはよく、遥か尾鷲湾まで見えました。
写真の道は、日出ヶ岳から続く「大杉谷」という上級ハイカー向けの渓谷クライミングコースです。三重県まで続いています。Pさんは渓谷美あふれる(らしい)このコースを行きたかったそうですが、我々の実力では三重にたどり着くまでに3回ぐらい死ぬと思ったので押しとどめました。
立ち枯れたトウヒが林立する中を進みます。酸性雨のせいなのか、鹿の食害によるものなのかは分かりませんが、森の墓場みたいで寂しい光景です。Pさんも悲しそうでした。元気づけるつもりで「トウヒがピンチだ!」と言って髪の生え際を指さしたりしましたが、全然ウケませんでした。
続いて、大蛇グラという絶壁に張り出した岩場に着きました。眺めが非常によいところですが、高所恐怖症のしじみには突端までいく勇気はありませんでした。
手すりにつかまって「人生崖っぷち!」とか言いながら記念写真を撮ってもらいました。ちなみにこのネタも全然ウケませんでした。
シオカラ橋という吊り橋に出ました。橋の下の渓流に降りて一休み。水が澄んでいてとてもきれいです。
Pさん
しじみ
Pさん |
「わーきれい、ここで顔洗ったら美人になるかな」
「いや、君は洗う必要ないと思うよ」
「ひどーい!どうせ私は何やってもダメですよ」 |
ほめたつもりが思いっきり誤解されました。
コースを一周して大台荘にたどり着き、入浴を済ませ、食堂で夕食。その後、星を見ようということで二人で外に出てみましたが、あいにくの曇り空で全然見えず、寒くなってきたのでひきあげました。
就寝にはまだ早いので、しじみの部屋にPさんも来て、とっておきのワインで乾杯。スモークチーズをつまみになごやかに談笑・・と言いたいとこですが、しじみはこういう場面にからっきし弱く、何をしゃべっていいか分かりません。
つけていたテレビで「世界ふしぎ発見」をやっていたので、とりあえず司会の草野仁さんにツッコミを入れ続けました。そのうち、Pさんが私そろそろ部屋に戻るね、というのであわてて振り向いた拍子に
ワインのビンをひっくり返して大騒ぎになりました。
・・枕を涙で濡らして、独り寝の夜はふけていきました・・
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